吹上の家

1991年(主屋)
2000年(仏間)
和歌山県和歌山市


家の事情でやむなく坂倉建築研究所を辞して帰郷する、
という想定外の人生コースを歩むこととなり、縁故とい
えば親族と友人のみ、地元とはいえ、果たして設計事務
所を運営していけるかという暗中模索のなかで、中学校
の同級生の父親である此のクライアントに、もし出会っ
ていなかったら恐らく現在の自分は無いだろう、と思え
るくらい大切な仕事でした。地元では高名な建築家が設
計した、築25年の大型数寄屋建築のリノベーション
を担当する好機に恵まれたのです。最初は水廻りだけだ
ったのが、どんどん改修エリアが拡がりLDK、応接室、
玄関、寝室と、1階のほぼ全部を、リノベーションする
こととなりました。もちろん開業して初めての大きな仕
事、地元の名士でもあられたので当然、緊張感は有りま
したが、当時培ってきた技術を全て投入して設計監理し
ました。この仕事を契機として会社関連の施設、そして
5年後には本社屋ビルの設計監理を委託されることにな
る、謂わば事務所の本当のスタートとなった仕事でした

主屋リノベーションが竣工した8年後に仏間増築の依頼
が有りそれが初めての本格的な数寄屋建築の仕事でした