畑屋敷の家
2010年竣工
和歌山県和歌山市
将来は1階部分だけでも住める、延床面積54坪のオー
ル電化仕様の2階建て木造住宅です。始まりは遡るとこ
ろ1995年、阪神淡路大震災のあと住宅建築はハウス
メーカーでないと駄目、との誤った宣伝工作が、テレビ
地上波で大々的に流され、それは取りも直さず、民放テ
レビの大スポンサーである故だが、現実にかつて美しい
景観を誇っていた、芦屋・西宮等の高級住宅地が正に巨
大な住宅展示場と化しつつあることに危機感を覚え、設
計事務所の建てる住宅は安全である事を切々と説いたリ
ーフレットを、作品集と共に封筒に入れ、神戸、大阪、
奈良、和歌山の各住宅地を徒歩で巡って自らポスティン
グしました。延べで三千部ほど撒いて反響は有ったもの
の具体的な契約には至らず、そのうち忙しくなってきて、
そのまま中断して十数年後。1通のメールが届き「御社
は以前、投函して頂いた事務所でしょうか」とのこと。
「隣地の敷地が漸く、購入できて建築が出来るようにな
ったので設計をお願いしたい」と、ご連絡いただきまし
た。その後、天王寺の事務所にご夫妻がお出で頂きクシ
ャクシャになった当時の封筒と案内を拝見して思わず当
時のしんどかったことを思い出して涙が出たものでした。
そういう、類まれなる経緯で生まれた奇跡的な建築です