インスタレーション趣旨

文豪・谷崎潤一郎の名著【陰翳礼賛】の中で、濃密に繰り拡がれた論説は、
かつての日本の美意識について、具体的に様々の例証を以って語っていま
すが、急激な西欧化で急速に喪われつつあった江戸情緒を何とか復活させ
ようとの強い意識から、敢えて日本文化論として世に問うたものと思います。
戦後の日本は谷崎の生きた時代よりも更にグローバリズム化が進み、日本
文化は次第に解体され、日本的情緒なぞは此れまでは一顧だにされません
でしたが、アフターコロナのパラダイムシフトの今こそ価値を見直すべきと捉
え、此の90年近く前の古色蒼然たる随筆を半世紀ぶりに本棚から引っ張り
出して敢えて建築を一度根本から考え直してみようという契機となりました。

結果、これ迄の長年の設計活動を通して積み上げてきたきた設計スタンスと
の近親性を改めて確認する作業となり、自身の思考を補強するテキストにも
なっていた事を、再発見した次第です。従って各画像に記載した短い文章は
今後の自身が目指す建築を、象徴的に表白するメッセージと、なっています。